というのです。従って梵天丸は、万海上人の生まれかわりになったのです。この万海上人は片目でありました。
○こうして英雄伝説をしくんで、家臣一統の期待を一身に受けさせ、この英雄伝説の子供を人質にして最上へ帰ろうというのですから、義姫の計画はすさまじいものでありました。
○しかし、人智と自然の摂理では人智が負けるのです。この後義姫はすぐに第二子を腹んで、人質計画は棚上げになってしまい、夫輝宗は梵天丸を万海上人の生まれ代わりと信じて、すぐに梵天丸の教育に取り組んでいきました。乳母、二人の小生、儒学の師、禅学の師虎哉宗乙、武道、そろばんの師、といった具合に英才教育をしていったのです。
○後に羽黒山の長海法印は、護摩祈祷の中に本当に万海上人が現れたと、虎茸禅師に告白しています。
○もともと、人間は無限の可能性の中に、どんな人も生まれてくる。ただ、生まれてくるのに、環境、位置、立場、事情などが種々異なるだけなのです。
どんな中にあっても、そこにおける教育で人の善悪、優劣が決まってくるだけなのです。
正しい知識を与え、それを生活の中に、知恵として生かすことができれば、立派に人は神性、仏性を備えた人格者になってゆくのです。
そういう意味では、政宗はすばらしい人間環境の中に誕生してきたといっても過言ではありません。政宗という人物は世に出るべき人物として、成長していったのです。
乳母は一族の増田貞隆の妻政岡
○無類のお人好で、信心深い輝宗は、義姫の計りごとをそのまま、まともに信じ、行動していったのです。義姫を疑うことになく、自分をしたって嫁ついできたものと信じ、そのように信頼して夫婦関係を結んできたのです。
○義姫も人間である以上、よほどの恨み、憎しみがない限り、実家大切の為に、良人を簡単に裏切るような行動は、一度情を通じてしまうと簡単にはできないものです。それに、義姫には、結婚の動機が悪い為、その胸に計りごとが隠されている為、輝宗の前に出れば、必要以上に良妻ぶることになります。もし、輝宗が良くない夫であれば、仕事を行いやすかったかも知れませんが、輝宗は、あまりに純粋真心から信じてくれたので、これには、義姫も悪魔でない限り、恨み、憎