●命名・名付けで知っておきたいこと
■命名で頭を悩ますというのは、実はとてもしあわせなことです。(姓名判断)
名前を適当に付けるというようなひどい環境になく、その子の将来をしっかりと見守る親の愛情はすごいものがあります。
だからこそ、命名というのは生まれた赤ちゃんに魂を注ぎ込むようなものだと思います。
★★命名には何が必要か?★★
■命名で知っておきたいこと
1)自分の名字(苗字)を知ろう!
◆ 姓:
先ずは、姓というのは何かということである。
これは今でこそ姓も苗字も名字も混同されてはいるが、元々は意味の違ったもので、用いられ方も違っていた。
そこには姓氏の長い歴史があるということになる。
簡単にいえば、姓というのは朝廷から賜ったものであって、「源平藤橘」が四大姓として有名である。
◆ 名字:
名字というのは、名田の名前からとった名前である。
名田というのは、大化の改新以来の公田が、その税の徴収の過程で変化し、荘園が名田制を受け入れていったものである。
名田を管理する名主が現れて、だんだん土地の私的所有権を強めていった。
平安時代後期に律令制が崩壊。荘園の管理や自ら開拓した土地や財産を守るために武士が出現する。
自らの支配している土地の所有権を主張するために自分の所有する土地(本貫地)(名 - みょう)の地名を名字として名乗り、それを代々継承した。
また荘官であれば荘園の名称を、郡司であれば郡の名称を名字とする者も現われた。
例えば畠山荘司平次郎重忠は武蔵国畠山荘を荘司として所領とした平氏の次郎(2番目に生まれた)重忠さんということになる。これが、名字(畠山)で名前(重忠)ということになる。
◆ 苗字:
ところで現代では既にこの名田というものもなく、それを主張する為の名字も必要がなくなってしまっている。
いつ頃からかというと、江戸時代には武士は石高で生活していたから、既に名字というよりも先祖と血筋を同じくするという意味で、「苗(みょう)」を使い、苗字とした。
だから、武蔵国の畠山荘を今は所有していなくても、畠山という苗字を使うのである。これが現代まで受け継がれて、苗字(名字)となったのである。
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自分の苗字のいわれは何なのかということを知っておくことは、自分の苗字の背景を知ることであり先祖の業績を知ることでもあるから、とても重要である。
その上で、名前をしっかりと考えるということが子供の将来のためにもなるというものである。(姓名判断)
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2)実名は秘名・知られないように隠した「御守り名」
◆「な」とは何か?
名という漢字のおこりは、夕に口と書くように、夕方になると暗くて人の顔がわからないから、口を開いてあなたは誰と聞かねばならない。
そこから来た漢字といわれる。
でも「な」はやまと言葉だから、既に漢字が導入される以前から「な」はあったということである。
それでは「な」というやまと言葉は、何なのか?
古代では、「な」というやまと言葉は、自分にも(一人称)相手にも(二人称)使われた言葉である。
我、あなた、お前である。韓国語でも「ナ」は私、「ノ」はお前という。「ノ」を呼びかけるときには「ナー」となまるから同じである。
古代朝鮮語と古代日本語は非常に近い関係にあったとする研究もあるから、どちらにしても「な」は個人を表す言葉であったに違いない。
その「な」に漢字が当てられ「名」になり、それに接尾語の「前」がつくようになった。
これは、「名」を神聖なものとして表すためにつけられたものである。
だから「名前」という意味は、神様からの贈り物、神様から賜ったものという意味なのである。
◆「名は体を表す」の意味は、名には魂が宿っているから、簡単には名告れない。
安倍晴明流でいえば、「名」は「呪」ということになり、それを名告れば虜になるということだ。
万葉集には、「たらちねの母の呼ぶ名を申さめど 道行き人を誰と知りてか」というのがある。”自分の母親だけが呼ぶ実名をどうして知らない人にいえましょう”という意味の句が載っている。
これは男も女も実名は簡単には知らせないよ!実名を名告るときは、身も心も相手に捧げるときということなのである。
実名には魂が宿っているから、もし悪神や鬼神に見込まれてしまったら大変なことになるからである。だから、古代では実名を名告らないのが習俗であった。
だから、「名前」は自分を守るための「御守り名」ということであった。
その名前を教えることのできる人は、自分の夫や妻以外にはいないのである。
◆古代、実名は秘名で禁忌であった。(見ざる、聞かざる、言わざる)
こういう心理的な伝統は今も残っていて、実名は読みにくくしてカモフラージュすることが多い。
そういう伝統があるのか、現代でも戸籍に名前を登録するときには、人名漢字であれば、読み方はあまり問われないことになっている。
そこで字(あざな)が使われるようになった。
この字の意味は、あざなえる名、交わる名、本名に交える名ということであって、人々と交流するときに使うと言うことである。
例えば、江戸時代の儒者 新井白石の本名は君美、字は済美という具合である。
ここで西郷隆盛の例を挙げてみよう!
明治5年に通称名、実名の併用を禁止する通達があった。
西郷は東京では吉之助の通称を使っていた。
国許では、実名で届けたかったのだが、その実名を誰も知らないのである。
そこで友人が適当に隆盛にしたということなのである。
その後、実際は「隆永」が実名ということを知ったのである。
それで、お孫さんが記念の印ということで「隆永」と名告ったということである。
こういう伝統は家の中にも残っていて、家人を呼ぶときは名前を直接呼ぶことは少ない。「あなた」「主人」、仕事上では「社長」「~(苗字)君」などということになる。
◆捨てる名前という命名
名前にわざわざ「捨」とか「棄」をつけたりする。豊臣秀吉の話は有名で、最初の子は「棄丸」と名付けたが、夭折してしまった。
その次に生まれた子は、一旦捨ててそれを拾って「ひろい」とつけたのである。
これなどは、悪魔に魅入られないように、死に神をだますということでつけるのである。
だから、名前には悪魔や鬼神も相当関心を持っていて、そういう名前の持つ何かにとりついて、悪事をはたらくことを暗示しているのである。
だから幼名にはわざと悪い名前をつけるということがあるのである。
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名前は、元々「御守り名」という発想があったのが古代からの伝統である。それほど名前は大きな意味を持っていたことになる。
だから、命名するときにはその名前が悪魔や鬼神に魅入られないように、その名前の苗字とのバランスを考えて自分を守ることのできる名前でなければならない。
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