事業存続に向けて毎晩、アメリカ人一人一人に説得を試みました。当時の私の担当は企画マーケティングでしたが、人事・労務部長のようでした。その過程で、違った価値観を理解した上で、こちらが相手に心を開いていけば、必ず気持ちが通じると実感しました。
化学は「無」から「有」をつくります。「産業の中で最も創造性が豊かな事業では」と考えて、就職先に化学メーカーを選びました。化学反応は目に見えません。目に見えないことを評価して新しいものをつくっています。自分は研究者ではありませんが、もっと何かできるのではないかという夢を持っています。
人間の生体も解明されていない部分の方が多いです。脳の中で一体、何が起こっているのか。どのメカニズムが作用するのか。アメリカで販売を予定している「ルラシドン」の挑戦も、脳の分野だから決断することができました。脳の世界ではまだまだ、意外なものが意外な効果を持つと思っています。(談)
■<メモ>大日本住友製薬
1897年設立の旧大日本製薬と住友化学グループの旧住友製薬が合併し、2005年10月に誕生。本社・大阪市。社員数4646人(09年3月末現在)。09年3月期の連結売上高は2640億3700万円。
(2009年8月12日 読売新聞)
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■トップリーダーになる人は運命式に特徴がある
「アメリカでは現在、戦略製品と位置付けるルラシドン(統合失調症治療剤)の臨床試験が最終段階にあり、自社での販売体制作りの準備を進めています。今後、さらにグローバル化のスピードを上げていきます。社員にも、海外を含めて違った世界を経験してほしいと思っています。」
このように語る大日本住友製薬の多田社長はリーダーになるだけあってちょっと特徴的な運命式を持っている。
とかく私たちは平凡であってもいい人生をと願うのであるが、トップに立つ