■違った世界で脳に刺激
アメリカでは現在、戦略製品と位置付けるルラシドン(統合失調症治療剤)の臨床試験が最終段階にあり、自社での販売体制作りの準備を進めています。今後、さらにグローバル化のスピードを上げていきます。社員にも、海外を含めて違った世界を経験してほしいと思っています。
違う世界に触れると、脳に対する刺激になります。例えば、営業担当者が本社で違う仕事をしたり、研究者が開発の仕事をしたりというように、自分が経験していなかった分野の仕事をすると、自分を磨き直すことができます。社長に就任してから1年余りですが、役員はほぼ全員、担当を変えました。半年ほどは戸惑いがあったようでしたが、今は会社組織全体の活性化につながっていると考えています。
転勤も同じです。私自身、国内外で10回ほど転勤しました。転勤先で受け入れてもらうために、どのように自分を変えるか。その過程で、社会的動物としてのスキルが蓄積されていくと思います。仕事は一人では出来ません。コミュニケーションが大切です。
■米国経験が基礎築く
住友化学時代、アメリカで4年間、米国の石油会社と折半で農薬の子会社設立にかかわりました。社員は米側から200人、日本から10人。一つの組織で一緒に仕事をしました。当時40代でしたが、この経験が現在の私の基礎になっています。
私は仕事について、「1から5まであれば、すべて大事だから一生懸命にする」という考えで進めていましたが、アメリカ人社員の一人から「1から5まで優先順をつけてほしい」と言われました。違った文化、価値観の存在を突きつけられたのです。
その会社は最終的に、米国の石油会社が撤退して住友化学の完全子会社になりましたが、その際、米社から出向していたアメリカ人社員のほとんどが移籍に応じてくれました。
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