一方、実容疑者からの封書が4日午後、読売新聞和歌山支局に届き、便せん1枚とCD―ROM1枚が入っていた。和歌山南郵便局の3日の消印があり、犯行後に投函(とうかん)したとみられる。CD―ROMには、幼いころから家族に恨みを抱いていたことなどが、A4判で約180ページにわたってワープロ打ちした文書で収録されていた。
◆父と確執、三十数年前から「妹と比較され腹立つ」
和歌山市宇須の無職坂口喜雄さん(82)方で、坂口さんと長女高田美和子さん(49)、高田さんの長男翔君(12)が刺殺された事件で、殺人容疑で逮捕された坂口さんの長男、実容疑者(52)は犯行の動機に「父親との確執」をあげた。実容疑者は高校時代、坂口さんが教諭を務める県立名門校に通っており、その当時から、父に対する不満を募らせていたとみられる。勉強ができる反面、暴力的なところがあったといい、和歌山県警は父子の確執など犯行に至った経緯を調べる。
実容疑者の県立高校時代の同級生らは「(実容疑者は)成績が良く、天才肌のところがあった」と口をそろえる。だが、中学の時には怒ると教室でいすを投げるなど、感情の起伏が激しい面もあった。3年で同じクラスだった男性(52)は「同じ高校の教諭だった父親のことを、『妹と比較されて腹が立つ』とよく言っていた」と、三十数年前から、父との確執の萌芽(ほうが)があったとみる。
千葉県内の大学卒業後は塾のアルバイト講師などをしていた。この男性は「定職に就かなかったため、親から文句を言われていたようだ」と話す。
以前、坂口さんの近所で暮らしていた女性(63)は、実容疑者が中高生くらいのころ、夜中に大きな物音がするのを、何度も耳にしたという。「どうしたのかなと思っていたが、そのうち(実容疑者の)髪がぼさぼさになり、マスクをして歩くなどしていた。様子がおかしくなったので家族関係がうまくいっていないのかなと思った」と振り返る。