もちろんシューベルトには金がないから、市場まで出かけてくず野菜を手に入れ、肉屋では牛や豚の膀胱や腎臓を分けてもらう。おしっこ臭いのでこれまたただ同然の値段だ。
膀胱や腎臓は細かく切って鍋に放り込み、ひたすらアクをすくいながら煮込むのだ。野菜が煮くずれして正体がなくなったら出来上がり。実はこれがなかなか美味しいのだ。ここまで煮込むと臭みも何もかも皆消えて美味になるのだから不思議だ。
この貧乏料理のレシピがブルジョア達の間で人気になったというのだから、シューベルトにとっては皮肉な話だ。
貧しくてひどい生活をしていても、シューベルトの作る音楽は豊であったから、食事と音楽は関係ないことが証明された。
●リンゴをカジって作曲をしたマーラー
マーラーはボヘミア生まれのユダヤ人。巨人、惑星など有名な作品を残しているが、当時は指揮者で生計を立てていた。マーラーはワーグナーをとても尊敬していたので、食生活もワーグナーを見倣った。ワーグナーは菜食主義者なので、マーラーも肉は食べなかった。実は彼は動物が嫌いだったのだ。想像力がありすぎて、残酷な姿を思い浮かべるともう食べられなくなってしまうのだ。彼の食事は、パン、バター、ジャム、コーヒー、ミルク、スープだけという感じであるからもう病人食である。
そのマーラーが作曲するときは、必ずリンゴ1個をおいて、それをかじりながら作曲をしたということらしい。リンゴにはクエン酸があって、疲労回復には効果がある。
●万葉歌人山上憶良は玄米主義で2倍の長生き
山上憶良は奈良時代の前期に活躍した歌人であるが、教養もあり歌も数多く残しているのだが、実は貧しかったのだ。晩年になってやっと下級貴族の仲間入りをした程度なのであるから、食生活も豊であるはずはなかった。その山上憶良は、玄米派であった。今でこそ玄米食は健康食で見直されてはいるが、当時はこういう物しか食べられなかったらしい。玄米は、ビタミンが白米の4倍、ミネラル類が2倍、それに玄米は固いのでよく噛んで食べなければならず、当然あごの筋肉を使うので脳の活性化に役立った。だから、彼は74才まで生き延びたのだ。