味の素は昨年、創業百年を迎えた。「食品」「アミノ酸」「医・健康」の3分野を連携させ、全世界で事業展開する成長戦略を描く。次の百年に向けて、グループの原点である「うま味」の発見に始まる創業の精神から独自の事業スタイルを探る。伊藤さんは、「うま味を利用しただしが、日本食の基本。日本食の良さを世界に広めるのが我々の仕事」と語る。
調味料分野で世界一
味の素は昨年、創業百年を迎えました。当社が百年間、仕事をさせていただくことができたのはなぜかと考えた時、「なぜ、おいしいか」を探究するとともに、「国民の栄養不良を改善し、健康に貢献したい」という創業の志があったからだと思います。
1908年、池田菊苗博士が「うま味」という新しい価値を発見したのが当社の始まりです。湯豆腐の昆布だしに着目し、4つの基本の味である「甘味」「塩味」「酸味」「苦味」と違う、もう一つの味があると研究を始めました。グルタミン酸というアミノ酸の一種を発見し、「うま味」と名付けたのです。
アミノ酸からスタートして現在、食、健康・医薬の分野が重なり合って事業展開する、世界でも意味のあるユニークな会社に成長したと考えています。今後も調味料の分野で世界一であるとともに、アミノ酸の分野で世界一の技術を持ち、世界の最先端を走り続けます。
食品会社だからできる医薬事業と、健康に貢献できる仕事をしていきます。健康に対する市場の要望と環境を意識するとともに、食の安全に配慮した商品を供給します。時代の要望にあった商品づくりをすることで付加価値を生み出します。
味の素グループはこれからの百年、人類の基本課題である健康、食資源の確保、地球の環境保全への対応に挑戦します。「おいしさの本質を究めて健康な生活をつくり出す」ことで全世界に貢献していきたいと考えています。
低カロリーでも美味
近年、先進国では過剰な栄養摂取が問題になっています。対応として塩分やカロリーを減らすと味が物足りなくなりますが、だしを使うことで、カロリーや塩分が少なくてもおいしく料理することができます。