今年1月、創業以来初めて、技術畑出身者として社長に就任した。子どもや高齢者の居場所を端末から特定できるセキュリティー・サービス「ココセコム」など、同社の根幹となる商品やシステムを先頭に立って開発してきた。「世の中の動きを先取りし、顧客に信頼される商品、システムをいち早く送り出すことが使命」と語る。
携帯の基地局を活用
安全・安心のために、どこよりも早く、お客様に信頼される商品・サービスを提供することが大事です。常に社会動向、技術動向、犯罪動向を把握しながら、セコムしかできないことに挑戦していく強い意志こそ、我々の基本姿勢です。
これまで、企業や家庭といった屋内のセキュリティー・システムに取り組んできました。1990年代後半から自動車やバイクの盗難、登下校時の子どもの誘拐、高齢者の徘徊など社会問題が続発する中で、屋外のセキュリティーにも力を入れていく必要があると開発したのが、「ココセコム」です。全地球測位システム(GPS)と携帯電話の基地局の電波を融合して位置を特定し、その位置情報を提供するサービスです。
屋外の防犯に力を入れるという発想自体は、当社の歴史で初めてでした。相当前から意欲はありましたが、位置を正確に測定できる技術が未熟で着手できませんでした。2000年に、アメリカの半導体メーカーが、GPSと携帯電話の基地局の電波を使って位置を特定する技術を開発しました。さっそく、渡米し、技術提携をしました。
しかし、日本はアメリカと通信環境が違うため、いくつものハードルを乗り越える必要がありました。中でも、GPSの電波は、ビルの谷間や地下、ビルの中には届きません。それを補完するために、KDDIの携帯基地局の電波で精度よく測定できるように腐心しました。実験もデータ収集も初めての取り組みです。当社の開発センターのメンバーが総出で北海道から沖縄まで出向き、海沿い、山間部、ビルの林立地帯など全国の様々なシチュエーションの膨大なデータを収集しました。さらに独自のノウハウも加え、当社のサーバーで位置を計算できるようになりました。
2001年4月に「ココセコム」が発売され、その数日後でした。「端末を持って徘徊していたおばあちゃんが、無事見つかった」との報告がありました。 |